谷和樹の解説
「谷和樹の教育新宝島」いよいよ今日から始まります。
初回、すごい特典がついているようですよ。
目次からダウンロードしてみてください。
先生の仕事がどんどん楽しくなるようなメルマガにしたいです。
このメルマガは、
1)向山洋一が蓄積した書籍、手書きノート、音源、映像、その他の膨大な資料などをもとに、
2)今の時代に必要な「教師の専門的な力量」をあぶり出し、
3)その身につけ方や使い方を具体的に示す。
ことをめざしています。
Webページの「創刊に寄せて」もぜひお読みください。
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運転中は気をつけましょう |
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交差点でクルマをとめ、ふと我にかえりました。
斜め前、反対車線にとまっている車の中から、見知らぬ女性がケゲンな顔でこちらを見ています。
目が合って、数秒。
私は自分が大きな声で「授業」をしていたことに気づきました。
「はい!○○くん!」
「そうだね!素晴らしいです!!」
満面の笑顔で、両手でジェスチャーをしながらです。
仮想の教室風景が目の前に浮かび、子どもたちが手を挙げています。
交差点の信号が青に変わりました。
その幻の教室を、慌てて脳から消去すると、気を取り直して私はアクセルを踏みました。
反対車線の女性は気味悪げに私から目をそらし、すれ違っていきました。
30代の頃です。
田舎の学校に勤務する私は自家用車通勤でした。
片道30〜40分を毎日運転します。
この往復の通勤時間は、私にとって大切な勉強の時間でした。
一番たくさんやったのはこれです。
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向山洋一の授業音声を聞く
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算数の授業、国語の授業、参観日の授業・・・
当時、向山の音声や動画は簡単に入手できません。
発売されるチャンスをねらって、売り切れる前に素早く申し込んで購入するしかありませんでした。
それを、車の中で繰り返し、繰り返し、再生するのです。
運転中ですから、完全に集中することはできません。
同じ授業を何回も再生して、聞き逃したところを確認します。
ある程度聞いたら、今度は次のトレーニングをします。
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シャドーイング
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シャドーイングというのは、お手本を聞きながら、あるいは見ながら、そっくりそのまま、同じように「重ねてやってみる」方法です。
英語やギターの練習でも、効果があります。
私は授業でそれをやっていたのです。
カーステレオから聞こえてくる向山の授業に、ピッタリ重なるまで練習しました。
だいたい重なるまでには少なくとも100回くらいかかります。
だいたいできたら、今度はCDをかけないで練習します。
目の前に子どもがいることをイメージしながら、実際に授業をしているかのように声を出します。
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シミュレーション
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ですね。
多少まちがえてもかまいません。
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第一にリズム・テンポ
第二に「楽しい」ムード
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この2つが大切です。
車の中でシミュレーションしていると、私は本当に楽しくなってきます。
子ども達が反応する顔や声までも聞こえてきます。
つい熱が入ります。
運転中です。
交差点で「なりきって演技」していると、周りのドライバーから気味悪い目で見られます。
何より危ないので、良い子はマネしないでください。
私のこのトレーニングは、しかし、効果はあったと確信しています。
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1 参観日の授業のポイント |
参観日の授業って困りますよね。
今回の付録に、向山の参観日の授業がまるごと!ついてくるようです。
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向山洋一 6年授業参観・詩文の授業
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文字起こしの他に音声もまるごとです。
これはラッキーです。
まず、「参観日の授業のポイント」についてお話しましょうね。
1つだけあげるなら、それは次のことに尽きます。
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全員の子の活動場面をたくさんつくる
(向山洋一「教室ツーウェイ」1994年6月p.48)
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要するに、
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1人残らず活動する
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ってことです。
そりゃ、無理じゃないの?って感じですが──
できます。
例えば、こんなふうにやってみましょう。
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1 フラッシュカードで導入
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これで、まず全員「声」が出ます。
フラッシュカードをしながら、教師が立ち位置を変えることもできます。
廊下側に立てば子どもは廊下側を見ます。
後ろに立てば子どもは後ろを見ます。
保護者から見て我が子の顔がよく見えることになります。
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2 音読
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だらだらと丸読みをするとダレます。
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1) 先生の後について追いかけ読み
2) 先生と交代読み
3) 隣の人と交代読み
4) 立って読み、読んだらすわる
5) 読みたい行を決めて「たけのこ読み」
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こういう「動き」のある音読がいいでしょう。
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3 答えや意見をノートに書く
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わかりやすいのがいいです。
算数なら簡単な計算。
国語なら簡単な「ぬき書き」など。
意見や理由ならごく短く書きます。
「何を書いてもOK」なものにしましょう。
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4 書いたノートを先生に見てもらう。
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「書けたら持っていらっしゃい」
といって、ノートを持ってこさせます。
先生が1人ひとりに◯をつけてあげるのです。
この場面、保護者は
「自分の子がノートを持っていく」
そのことだけを見ています。
ですから、テンポよく、次々に見てあげます。
全員に力強く声かけをします。
「よろしい!」
「合格!」
「その通り!」
途中、
「ノートを見せた人は教科書を小さい声で読んでいなさい」
などと指示をします。
活動していない時間(空白の時間)をできるだけ少なくするためです。
ノートを持ってこない子が、もし1人でもいたら?
普段の授業なら後でフォローできますが、参観日では良くないです。
全員持ってきたかを注意深くみます。
「まだの人は途中でもいいから持っていらっしゃい」
のように言って必ず全員に◯をつけます。
そして褒めます。
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5 黒板に書かせる
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意見を書かせたら、ノートを持ってきた子から黒板に書かせる方法もあります。
縦書きで書きます。
間隔と時間を工夫すれば、20名程度なら、全員書けます。
この時のコツは
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半分くらいの子が書き終わったら発表させ始める。
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ことです。
黒板で10名が書いていたとします。
5名くらいが席に戻ったら、その子たちから発表をさせ始めるのです。
発表がはじまると、まだ書いている子たちも少し急いで書いてくれます。
空白が少なくなり、授業がダレません。
発表したら当然、必ず褒めます。
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6 意見の分かれる発問をする
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付録の向山の授業では「ひゃひゅひょ」の授業が紹介されています。
こうしたポイントは向山の参観日の授業から私は学びました。
下の画像の向山の文章をぜひお読みください。
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お気づきでしょうか。
手書きのものを見ると、簡単な修正が「3箇所」しかありません。それ以外は、まったく滞ることなく、ペンで一気に書いていることがわかります。
パソコンで繰り返し書き直し、何度も修正する私からすれば、手書きで一気に書き下ろしているこの原稿は驚愕です・・・。
※ちなみに原稿中の「愚娘」というのはこのメルマガの刊行にかかわっている向山の実娘「アニャンゴ」のことです。
※こういう向山の手書きのものが、たくさん残っています。中には、活字になっていないものもあります。そうしたものもこのメルマガでは取り上げ、分析していく予定です。
さて、今は令和時代です。
もし私が、参観日の授業をするとしたら。
今なら、次のことも必ず入れます。
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GIGA端末の活用
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だって、まさに
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GIGA端末で全員の子の活動場面をたくさんつくる
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ことができるからです。
ここでは詳しく書きませんが、大切なのは、
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保護者にも子どもたちの動きが見える
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ということです。
ですから、保護者もクラウドに入って「閲覧」できるならそれが一番いいでしょう。
それが難しいのであれば、先生の端末だけでも共有します。
それも難しければ、先生の画面を拡大して見えるようにします。
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2 子どもたちが熱中する授業のポイント |
さて冒頭の付録にもどります。
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向山洋一 6年授業参観・詩文の授業
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この授業では、向山は市販の音読集を使用しています。
当時はそれしかなかったのです。
今なら向山が開発した音読集があります。
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1 話す・聞くスキル
2 中学生のための暗唱詩文集
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などです。
使えるなら、それを使うほうが効果的です。(念のため情報でした。)
この向山の授業は「熱中する授業」の代表例です。
しかも「参観日対応」です。
文字起こしもあります。
音声もあります。
ぜひ時間をかけて分析しましょう。
追試もしましょう。
どの学年でも応用できます。
私も何度も追試しました。
子どもたちが熱中する授業には共通する要素があります。
その1つ目。
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1 知的な授業
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付録の向山の授業は「知的」です。
知的な授業というと、「深い教材研究」が必要ですよね。
それは確かにそうです。
この「ひゃひゅひょ」の授業などは素人が簡単に思いつけるものではありません。
向山が開発した知的な授業の代表例には、例えば次のようなものもあります。
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1) 口に二画付け足して別の漢字をつくる授業
2) 「土」の漢字の成り立ちを教える授業
3) 一枚の写真からたくさん情報を読み取らせる授業
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いずれも深い教材研究に裏打ちされています。
でも、実は次のような授業も知的になるのです。
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1) 活動的な授業
2) 心地よいリズム・テンポの授業
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逆に、子ども達の動きや発言が少ない授業は知的になりません。
空白の時間が多くて、だらだらとした授業も知的になりません。
頭が悪くなった気がします。
上の「口に二画」などは誰がやってもだいたい成功する知的な授業の代表です。
しかし、もし、この同じ授業を、活動をあまりさせないで、だらだらとやったら?
まるで知的になりません。
台無しになってしまいます。
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1 知的な授業
(ただし、活動的で心地よいリズム・テンポがあること)
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ということになりますね。
付録の向山の授業には知的な要素がたくさん詰まっています。
授業最初の「筆順練習」などは、単に練習しているだけのように見えますよね。
でも、活動的で心地よいリズム・テンポがあるのです。
だから、飽きないし、知的に感じるのです。
さらに、
「H君、どういう字か分解して説明して下さい。漢字というのは分解して伝えられることが大事ですね」
などの向山の発問が、授業をより知的にしています。
熱中の要素2つ目。
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2 「できない状態」から 「できるようになる状態」になる授業
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これも熱中します。
付録の授業では、
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1) 早口言葉
2) 暗唱
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などがそれにあたります。
早口言葉も、暗唱も、
「練習してできるようになる」
「先生が聞いてくれて合格・不合格を言ってくれる」
という要素があります。
「できるようになった」
ということが実感できるから熱中するのです。
さらに、向山の場合、早口言葉を
「2人ずつ読んでもらいましょうかね」
と言って、1人ひとりに言わせていくわけです。
これを、「みんなで一斉に」言わせたら全く熱中しません。
1人ひとりが言うから、緊張感があります。
なにせ早口言葉です。
言い間違えてもそれほど痛手はありません。
だからさらに熱中するのです。
ここには、同時に次の要素があります。
熱中の要素3つ目と4つ目。
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3)ゲームの要素がある授業
4)やることがハッキリしていて「全体の進行状況」がわかる授業
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次々に指名されて、いい間違えたり、笑いが起きたりする。
結果がすぐに分かる。
間違えたところはすぐにその場で練習できる。
再度挑戦することもできる。
こうしたゲーム的な要素があるわけです。
また、1人ひとり順番にやっているのに飽きません。
やることがハッキリしていて「全体の進行状況」がわかるからです。
最後です。
熱中の要素5つ目。
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5)自分で考え、自分で創りあげていくタイプの授業
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この要素は、例えば「ひゃひゅひょ」の授業に含まれています。
子どもたちが、
「ひゃっくり」
「ひゅうま」
「どうみゃく」
など、次々に発想し、発言している様子が聞き取れます。
自由に考えて、伸びやかに発言できる授業ですね。
ぜひ、みなさんも楽しい参観授業に挑戦してください。
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出典・引用文献
1)『教室ツーウェイ』(原稿)1994年6月号p48 向山実物資料 XA04-199406-115
2) 向山洋一「6年授業参観・詩文の授業」(文字起こし)1993 向山実物資料 A09(2)-26-01
3) 向山洋一『教え方のプロ・向山洋一全集31 熱中する授業は「授業の原則」に貫かれている』明治図書2002 p116-118
関連リンク:
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