谷和樹の教育新宝島

特典資料

谷和樹の解説

理科ノートの書かせ方
理科のニガテな私が尊敬した理科教師
理科の得意な先生を尊敬します。
例えばTOSSの小森栄治ですよね。
中学校の理科の先生でした。
今は日本理科教育支援センターの代表です。
小森は東大の大学院を修了。
そして、なぜか中学校の先生になった人です。
ソニー賞の最優秀賞とか。
埼玉県優秀教員とか。
文科大臣表彰とか。
辰野千壽教育賞とか。
そういうのを数々受賞されました。
私にはほぼ意味不明です。

そのすごい人と、私はこの20年くらいずっと、
「セミナーでW登壇」
しています。
経済広報センターが主催する
「エネルギー教育シンポジウム」
です。
もう190回近いのでしょうか。
毎年、全国各地で開催しています。
これと関連して、
「各地のエネルギー関連施設」
を一緒に視察してきました。
主だった施設はほとんど見学したと思います。
小森の深い見識、
科学的なものの見方、
謙虚に学ばれる姿勢、
ご一緒するたびに、
本当にすばらしいなと思います。

小森のような教師に出合う前は、
理科が得意な人って、
私はあまり好きではありませんでした。
「理科の虫」のような人っていますよね。
ちょっとオタク系。
意味不明なIT用語みたいなのを連発する。
周囲をどこか見下している感じもあったり。
いや、おまえもだろうって?
はい、ごめんなさい。
自戒もこめてです。
そういう系の人、
あまり好きではありませんでしたが、
でも、例外的にすごいと思った人はいます。

私が新卒1年目のとき。
同じ学校で勤務した先生もその一人でした。
教員室の彼の机の上。
作りかけの理科教材、
わけのわからない部品、
あやしげな専門書、
見たこともない小説、
意味不明な紙類の束、
そういうのが山脈をつくって散乱していました。
でも、職員室に子どもがくると、
本当にニコニコとして話をするのです。
新米の私は授業のやり方がわかりません。
理科で新しい単元に入るたび、
その先生のところに行きました。
「教えてください」
お願いすると、いつでも時間をとってくれます。
それはそれは丁寧に教えてくださいました。
今ふりかえって、相手の立場になって考えてみれば、
やっぱり面倒だったと思うんですよね。
素晴らしい人だったなあと思います。

そんなある朝。
子どもが職員室に報告に来ました。

先生、学校に来るとちゅう
「きつね」が車にひかれて死んでいました。

田舎の学校です。
きつねが道に飛びだして、運悪く車がきたのでしょう。
その話をきいた先生は、
「えっ、きつねが?」
と言うと、なんと、校長に
「校長、ちょっと行ってきます」
と言って、職員室を出て、車で行ってしまうのです。
校長も「おう」と言った程度でした。
勤務時間中ですよ。
今なら、考えられないです。
先生はそのきつねを丁寧に学校に運んできました。
理科室に運び
「骨格標本」
を作るというのです。
私には、まったく想像すらできないことでした。
先生は誰にも相談しません。
理科室で一人で黙々と作業をしているのです。
私は、その作業を見たい誘惑に勝てませんでした。
おそるおそる理科室にいきました。
私の気配に、先生はゆっくりふりかえると、
「やってみる?」
と誘うのです。
真夜中になるまで先生の手伝いをしました。
やったことがある人は少ないでしょう。
きつねの皮をはがし、
内臓を出し、
ちょっと描写しにくい様々な処理をし、
肉片を丁寧に丁寧に、骨から削いでいくのです。
並の神経ではできない作業です。
「おまえも変わっている」
先生にそう言われました。
その後も理科は苦手ですが。
そのような、とことん突き詰めるタイプの人。
私は好きでしたし、尊敬していました。
教材や授業へのこだわりも強かったです。
しかも謙虚でした。
事実や実力をきちんと見てくれました。
よい点があれば評価してくれました。
私のような若手の授業でもです。

小森との出会いやそういう経験を通して、
私の理科へのイメージは少し変わったと思います。
今でも理科は得意ではありません。
でも、どこかキライにはなれません。

1 授業が変わる理科ノートシステム(前)
さて、そんな私ですが、
田舎の小学校の先生ですから、
理科を授業しなければなりません。
けっこうつらかったです。
ですが、小森や向山の理科指導に出会って激変します。
とりわけ、強く影響を受けたのは

向山の理科ノートシステム
です。
私はそれを直に見たことはありません。
セミナーで向山が話す内容から断片的に学びました。

まず、システムの中心となる考え方は

全員のノートをチェックして合格させる
という点です。
「理科室で実験するときのノート」
これを例に書いてみます。
まず、大切なことは、

1 ノートにきちんと実験図を書かせる
ということです。
これが第一です。
もう少し正確に言うと、

A 実験図
B 実験に必要な準備物

これをノートに書かせます。
もちろん、指導の時期や単元の内容によって、若干の違いはありますよ。
学習が進んでくれば

1 問題
2 予想(仮説)
3 実験
 1)準備物
 2)実験図
4 結果
5 考察

まずは、この1から3をしっかり書かせます。
イメージとしてはこういう感じになります。

図
↑理科ノートのイメージ 見開き1・2ページ目(谷が書いた見本)
4)と5)は実験が終わってから書きます。
そこで、あらかじめ

4)と5)を書くための欄

を先につくらせておきます。
下の図のような感じになります。

図
↑理科ノートのイメージ 見開き3・4ページ目(谷が書いた見本)
この1)から5)を見開き2ページで完結します。
それが理想です。
実験によっては2ページに入らないこともあります。
その場合は上のように4ページ展開で書かせます。

さて、次に最も重要なポイントがあります。

2 全員のノートをチェックする

全員のノートをチェックするのですが、
理科の実験って通常は4人グループ等でやりますよね。
そこで、子どもたちに次のようにいいます。

実験図と実験に必要なものをノートに書きなさい。
班で相談しながら書きなさい。
書いた通りに、実験してもらいます。

「書いた通りに」
というのがポイントです。
実験図と必要なものは、
「教科書のとおり」
で全く問題ありません。
子どもたちが自分で考えたものでもかまいません。
それは、そのときどきで違います。

1)その単元のねらい
2)その単元の内容
3)学校の理科室の備状況
4)子どもたちの実態・・・

1学期の最初ごろなら、教科書どおりが安定します。
子どもたちは相談しながら、書きます。
やがて書き終わります。

実験図と準備物が書けたら、
班の4人でそろってノートを持っていらっしゃい。

4人そろって持ってこなければなりません。
最初の班が4人そろって先生のところにきます。
そこで、教師は「にこやかに」こう言います。

じゃ、きびしく!みますね。
太郎ちゃんのノートから見せてください。

おわかりですね。
太郎ちゃんはやんちゃな子です。
いいかげんに書いています。
4人そろっていくんだ。
自分がちょっといいかげんでも大丈夫だろう・・・
そうたかをくくって来たのです。
太郎ちゃんは、あせります。
「えっ、ぼくのノート?」
「そうだよ、太郎ちゃんのノート(^^)」
「えっ、ちょっ、ちょっと待って」
そう言って、4人そろって出直してくる班もあります。
「太郎、何やってんだよ」
「ちゃんと書きなさいよ」
班の子たちに言われながら、必死に直してきます。
他の班も次々にやってきます。
「先生できました!」
けっこう自信満々の班もあります。
そこで、こう言います。

ここに書いてあるものしか、絶対に貸し出しませんよ。
足りないものがあったら実験できませんが、
本当にだいじょうぶですか?

子どもたちは
「ぎくっ」
となります。
「えっ、えーと、先生、ちょっとだけ待ってください」
そう言って、また戻り、再度相談する班もあります。
子どもたちは可愛いですよ。
「空気」とか「ゴミ箱」まで書いてくる班もあります。
4人ともちゃんと書けていた班から合格です。
理科室の授業は2時間連続の学校が多いでしょうか。
でも、1時間の学校もありますよね。
どちらでもかまいません。
2時間連続なら、理科室でノートを書き始めます。
上のノートが合格した班から、実験道具を貸し出します。
1時間なら、ノートは教室で書いてもかまいません。
合格した班から休み時間でもいいですし、
時間が余っているなら、残りの時間で
「植物の観察」などをさせてもかまいません。
その次の時間に、理科室ですぐにスタートできます。

2 授業が変わる理科ノートシステム(中)
さて、実験が始まりました。
ノートにすべての準備と実験図が書いてあります。
教師は説明する必要ありません。
(安全面の注意があるときは別ですよ)
子どもたちだけで、どんどん実験が進んでいきます。
教師は、安全面を中心に、各班を見ていればいいだけ。
順調に進んでいるなら、その間に教師は

この次の時間の実験の準備
をしてしまうといいでしょう。
班の数だけトレーを置きます。
その中に次回の実験用具を入れておきます。
子どもたちが本時の実験をしている間に、
次の時間の実験の準備が完了します。
「となりのクラスの分」も準備しておくと喜ばれます。
次の実験の準備って放課後にしたりしませんか?
その必要はほとんどなくなります。
すべて、向山から習いました。

さて、やがて実験が終わる班も出てきます。
その班から、

3 ノートに結果と考察を書く
わけです。
「書くための欄」をあらかじめ作ってあるのですから、
自動的に進みます。
いちいち作業を止めて、静かにさせて、
教師が必死に指示をする必要はありません。
さきほど「教科書どおり」でいいと書きました。
すると、心配される先生がいます。

教科書どおりだと、実験の結果がわかってしまって、
つまらないのではありませんか?

そんなことはありません。
教科書どおりにやって、教科書どおりの結果が出る。
それを子どもたちはとても喜びます。
熱中して取り組みます。
実際の実験では、ときに「誤差」が出ます。
「先生、教科書に書いてある結果になりません!」
と、相談にくる班もあります。
にこやかに、次のようにいいます。

それが実験した結果ですから。
違っていたなら、違っていたことを書きましょう。

すると、子どもたちは
「なぜ、違ったんだろう」
と考えるのです。
「先生!もう1回実験をしてもいいですか?」
と言って再チャレンジする班もあります。

3 授業が変わる理科ノートシステム(後)
やがて、結果と考察を書き終わります。
ここで、最後のポイントです。

4 ノートが合格した班から教室に帰る
たとえば、12時20分に授業終了だとします。
すると、12時すぎに片付け開始。
12時5分くらいから教室に戻る準備となりますよね。
その際、

必ず先生にノートを見せなければならない
のです。
実験の片付けも点検しますから、これも
「班ごとに4人そろって」
持ってこさせるのがいいでしょう。
さきほどと同じです。

じゃ、きびしく!みますね。
どの子のノートから見ようかな。

子どもたちはわかってきます。
ちゃんと書くようになります。
ちなみに、4時間目なら、次は給食。
6時間なら次は下校。
いずれも、理科室にくるまえに準備が完了しています。
給食ならランチョンマットや当番着のセット。
下校なら連絡帳は記入済でランドセルと帽子は机の上。
その状態で理科室に来ているわけです。
ノートが合格した班からすぐに帰れるのです。
中堅以上の先生方には初歩的なことですね。
こうしたしくみをちゃんとつくっておけば、子どもたちは混乱なく動きます。

このことを紹介している向山の文章を載せますね。

図

そして、向山が指導した子どものノートです。
まず、「1ページ展開」のもの。

図

実験図、予想、理由、結果などがきちんと書かれています。
次は、「4ページ展開」のもの。

図
図
これにも、問題、予想、実験図、結果などが書かれています。
やはり特徴的だと思うことは、

きちんとしすぎていない

ということです。
もちろん、丁寧できれいです。
大切な要素は押さえています。
しかし、堅苦しさがありません。
個性的で自由度が高い。
そのときどきの単元によって柔軟性があるようです。
みなさん、今月のメルマガの付録!
この向山の指導した理科ノートが、なんと、
ほぼ全ページ?ついてくるようですよ。
実験だけではなくて、観察のノートもです。
これは勉強になりますね。
ぜひ、分析してみてください。

4 GIGAスクール端末でまとめるなら
あくまでも私の個人的な考えですが、
基本は紙のノート
だろうと思います。
中学生から高校生になら別です。
やはり大幅にデジタルに移行したい。
それはそう思います。
ただ、小学生には、できれば
「紙のノートの柔軟性」
これもしっかりと体感させておきたいです。
中学年まではもちろんです。
できれば高学年でもです。
そのうえで、端末でノートのスクショを撮ればいいです。
簡単に他者参照できます。
コメントの書き込みも簡単です。
紙で作業したものをデジタルでも共有する。
そしてスタディログとしても残していくのです。

もちろん、高学年になるにつれて変化させます。
デジタルで直接まとめをする場面を増やしていきます。
「まとめ」の場面では、次のようなアプリが便利です。

1)Miro(https://miro.com/
2)Figma(https://www.figma.com/
3)GoodNote(https://web.goodnotes.com/

こういった
「デジタルホワイトボード系」
が使いやすいと思います。
テキストのキーボード入力とペン入力が併用できます。
紙に書いたものもスクショで取り込めます。
ネットの資料もペーストできます。
お互いにコメントできます。
もちろん、ノートまとめですから、原理は同じ。
先ほど書いた4つのポイント。

1 ノートにきちんと実験図を書かせる
2 全員のノートをチェックする
3 ノートに結果と考察を書く
4 ノートが合格した班から教室に帰る

これが大切です。
ただデジタルなので、実験図などはペーストでも可能。
準備するもののリストも班で共有。
したがって、重点は「結果と考察」ですね。
自宅での続きの作業もできます。
実験のあとで発展的に討論したい!
そんなときに、この
「デジタルでのまとめと共有」
は威力を発揮するでしょう。
高学年なら年に数回程度は挑戦してみたいところです。

出典・引用
1)向山洋一『教育トークライン1997年3月号』東京教育技術研究所
2)4年児童『理科ノート』調布大塚小学校、1982-1983、向山実物資料A14-09-01

関連リンク
1)Miro(https://miro.com/
2)Figma(https://www.figma.com/
3)GoodNote(https://web.goodnotes.com/

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